窓ぎわの晴太くん
里子は晴太の胸に抱かれながらその言葉を静かに聞いていた。
里子がどんなに泣こうが叫ぼうが晴太の心の傷には勝てない。
深くえぐられた晴太の心の傷が治らない限り、里子の一途な想いでもはねのけられる。
それほど晴太は傷ついていた。
何年経った今でもその傷は全く癒されていない。
「私が晴太さんを愛する事で少しでも晴太さんの心の傷が癒えるのなら、私はずっと晴太さんを愛し続けます。
たとえ晴太さんが私のそばにいなくても、私は晴太さんの事をずっと考える。
早く心に深くできた傷が癒えますように・・・
おばあさんが愛してた幸せな頃の晴太さんに戻れますようにって」
晴太は里子の顔を両手で包んでキスをした。
でも、すぐに顔をそらした。
「ごめん・・・
僕はもう自分のせいで愛する人を失いたくないんだ。
分かってほしい・・・
ののちゃんをののちゃんの今の生活を守りたい。
僕がウロウロしてたらそれはできないんだ。
ごめん・・・
本当にもう帰らなきゃ・・・」
晴太は痛む体を無理やり起こした。
もう始発の電車も出る頃だろう。
里子は泣きながら、それでも俺のために何かを台所で準備している。
「これ・・・
水分はちゃんと摂らないと倒れちゃいますから」