窓ぎわの晴太くん



それはストロー式の水筒に入ったさっきのはちみつウォーターだった。
里子はたくさんの涙を目に溜めてそれでも笑顔で晴太に手渡した。


玄関で靴を履いた晴太はもう一度里子の顔を見た。


「晴太さん、いつでも遊びに来てくださいね。

私が晴太さんにできる事はこうやって晴太さんに美味しいものを作ってあげることしかできないけど」


晴太は笑顔で「ありがとう」と言った。

晴太がドアを開けると外から朝の光が差し込んでくる。
晴太は振り向かなかった。
「さようなら」も何も言わずにドアを閉めた。


里子は本当は納得なんかしていなかった。
晴太と会えなくなることにたくさんの理由を並べても納得なんかできない。

でも、晴太の心の苦しみが里子に訴えているのが分かった。

僕を自由にしてくれと・・・


里子はその場にしゃがみ込み声を上げて泣いた。


あっ・・・
連絡先・・・

また聞くの忘れた・・・

里子のばかやろう・・・


これで本当に晴太さんとは会えない・・・

だって晴太さんから私に連絡なんてあるはずないから・・・


里子は晴太が座っていたソファで丸まって泣いた。


晴太さん・・・


晴太さん・・・








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