窓ぎわの晴太くん



里子は結局一睡もせずに会社に来ていた。

晴太がいなくても里子の日常はいつも通りに始まる。

仕事に穴を開けるわけにはいかない。
どんなに辛くても頑張らないと・・・


「ののちゃん、どうしたの?
目が真っ赤だしクマもすごい」


こんな時、派遣のおばちゃん達の口に鍵をかけられればと切実に思った。
真面目な里子は一人一人にちゃんと返事をする。


「はい、悲しいDVDを2本も見て号泣しました」


皆その返事で笑ってくれるのに西川だけは違った。


「晴太君と何かあった?」


西川は里子の耳元でそうつぶやいた後に、もうそう聞いた事を後悔した。
里子の目から大粒の涙がこぼれ落ちた。


「な、何もありませんよ・・・」


西川はさりげなく里子にティッシュを渡すと里子の手を握りこう言った。


「今日はとにかく頑張りなさい。
人を好きになるって辛い事の方が多いのよ。

ののちゃん、ファイト」


里子はその言葉に救われた気がした。


辛いのは私だけじゃない・・・
晴太さんの心の痛みを思えば私の苦しみなんて大したことはない。

くじけるな、元気を出せ。
晴太さんの心の傷を癒すって決めたじゃない。


里子、泣くな。
強くならなきゃ・・・・














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