窓ぎわの晴太くん
晴太は2時間程かけて美津子のお屋敷にたどり着いた。
広大な土地にひっそりと佇むこのお屋敷は、美津子とお手伝いさんの二人が住むにはあまりに広過ぎる。
「着きましたよ」
晴太は門の前で車を停め迎えに来たお手伝いさんに一礼をした。
でも、美津子は降りようとしない。
美津子は後部座席の窓を下してお手伝いさんを呼んだ。
「門を開けてちょうだい。
それと奥のガレージのシャッターも下げてきて」
晴太は訳が分からなかった。
早くこのばあさんを降ろして10分程寝たいのに・・・
「二枚目さん、この先のガレージまで送って下さらない?
ここで降ろされても玄関まで結構歩かなきゃならないの。
お願いします」
晴太は辺りを見回した。
田舎の一本道だ。
車一台通っていない。
不審者がいないことを確かめると晴太は車をガレージまで走らせた。
門の中に入った晴太はこのお屋敷の立派さにため息をついた。
腐るほど金があるんだろうな・・・
晴太がガレージに車を入れ込むと急にシャッターが下りはじめた。
「え?
何なんですか?」
「部屋でちょっと休みなさい。
そんなひどいケガをして近所をウロウロされたら、こんな小さな田舎じゃ警察に通報されるわよ。
私は一歩も外には出ないから、二枚目さんはしっかり休養をとること」