窓ぎわの晴太くん
マジか・・・
晴太が車の中で躊躇していると、美津子は笑顔で晴太を手招きした。
晴太はドアを開け、体を車の中から出そうとするだけで全身に激痛が走る。
「痛っ・・・」
美津子も一緒に痛そうな表情で顔をしかめる。
「早くいらっしゃい」
美津子はガレージから繋がっている客間に晴太を通した。
8畳ほどの和室の部屋は畳のいい香りがする。
奥にはもうすでに布団が敷いてあった。
「私を見張るのが仕事なら外で見張るのもここにいるのも一緒でしょ?
とにかく休みなさい。
私はその先のリビングでくつろいでるから」
美津子はそう言うとさっさとこの部屋から出ていった。
晴太は縁側から見える美しい庭をぼんやりと見ていた。
里子はちゃんと会社に行っただろうか・・・
晴太はお守りのようにジーンズのポケットに入れている里子の連絡先のメモを取り出した。
里子の携帯番号とアドレスが書いている。
もう里子に会わない・・・
そう決めただろ?
晴太はしばらく里子の書いた文字をぼんやりと見ていたが、意を決してその紙を小さく丸めた。
バイバイ、ののちゃん・・・
ごめんな・・・
晴太はその丸めた紙をゴミ箱に捨てた。
さようなら・・・