窓ぎわの晴太くん
晴太は深い眠りに落ちていた。
今、俺は夢の中にいる。
森の中から抜け出せないこの夢は、ばあちゃんが死んでから何度と俺を苦しめた。
深く暗く湿っている森の中で俺はただひたすら走る。
どこに向かっているのかさえ全く分からない。
茂みに捕まり枝先で傷を負い切り傷だらけでただひたすら走るだけの孤独な夢。
今の俺を物語っている恐怖の夢。
でも、今回は何かが違う。
ただひたすら走っているはずの俺が何かに向かって走っている。
そこが何なのかは分からない。
でも、確実に何かに向かって走っている・・・
晴太はうなされるように目が覚めた。
ここはどこだ?
晴太は見慣れない旅館のような部屋に一瞬頭が働かなかった。
そうだ、金井のばあさんの家だ・・・
晴太は時計を見ると愕然とした。
もう夕方の6時を示している。
携帯には相沢からの着信が山のように入っている。
晴太は起き上がり洗面台で顔を洗った。
相沢に何て言い訳すればいいんだ・・・
晴太は鏡に映る自分の姿を見て肩を落とした。
口元の傷は周りの皮膚を紫色に変色させているし、左目と左頬の間も蹴られたのか赤く腫れあがっている。
無様な自分が情けなかった。
すると、昔懐かしい電話の音が鳴った。
部屋に付いている電話の受話器を取ってみると、
「二枚目さん、そろそろ起きた?
ご飯ができてるからリビングにいらっしゃい」