窓ぎわの晴太くん



美津子はもう84歳になる。
髪は白髪だがセットされた短めのショートカットが年より若く感じさせた。
耳が少しだけ遠いらしい。
それ以外はお上品な可愛らしいおばあちゃんだった。

晴太は間違いなくお腹は空いていた。
でも、口の傷がうずくためそんなにたくさんは食べれない。
熱い物、固い物、その二つはどう頑張っても食べれなかった。


「さおりさん」



「はい」


美津子はお手伝いさんを呼んだ。


「二枚目さんのご飯をおじやにしてあげてちょうだい。
そして、冷ましてあげて下さいね。

あと、冷蔵庫に京都から送っていただいた水ようかんが入っているからそれも持って来て」


晴太は美津子がなぜこんなに親切にしてくれるのかが分からなかった。


「あの、食べたらすぐ出て行きますから。
外の見回りもしておきたいし」


すると美津子の顔がかげった。
美津子は首を横に振りながら晴太を見ている。


「たくさん食べて元気になったら話してくれるって言ったでしょう?」



「え? 何を?」



「こんなケガをした理由と、こんな仕事をしなければならない理由」



え?
俺、そんな約束したか?

晴太はおぼろげな記憶を必死に辿っていた。


「はい、どうぞ」


目の前に具だくさんのおじやと冷たい抹茶の水ようかんがやって来た。


もうしばらく美津子につきあわないとならないらしい。
最悪だ・・・




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