窓ぎわの晴太くん
里子と涼は夏子の店を後にした。
「どっかでご飯食べようか?」
涼が里子にそう聞くと、里子は黙ったまま下を向いていた。
涼にはもう分かっている。
「品川に行ってみる?
晴太はいないと思うけど・・・」
里子の顔色が明るくなった。
本当に分かりやすい女の子だ。
「涼さん、ありがとう・・・
でも、もし忙しいのなら私一人で行っても全然大丈夫です。
晴太さん、ケガをしてるんでやっぱり心配で・・・」
涼はうんうんと大げさに頷いた。
「残念ながら全然忙しくないから大丈夫です。
でも、腹は減ってる。
じゃあさ、品川でパトロールが終わったら俺につきあってよ。
美味しいつけ麺屋があるんだ。
つけ麺食べたい」
「了解です。
じゃ、最初にあのホテルの前をぐるっと見回って晴太さんがいなかったらつけ麺を食べに行きましょう」
里子は笑顔になった。
涼といると自然と笑顔がこぼれてくる。
「じゃ、もし晴太がいたら?・・・」
涼は髪をくしゃくしゃにしながら悪戯っぽい目をして里子を覗きこむ。
「晴太さんがいたら・・・」
里子はその言葉だけで元気になった。
足取りも軽やかにスキップのように歩き始める。
「もし、晴太さんがいたら、その時はそのつけ麺を一緒に食べに行きましょう。
口の中は傷だらけだけど、つけ麺なら食べれるはずだから」