窓ぎわの晴太くん
品川駅に着くと里子と涼は無言であのホテルまで向かった。
涼は里子は晴太の秘密をきっと知っていると感じていた。
ケガをしてまで里子の家に来る晴太もきっと里子の事を本気で想っているのだろう。
それでも晴太は里子との別れを選んだ。
晴太は昔からそうだ。
さりげない優しさを身につけていた。
高校生の晴太に中学生だった俺は憧れを抱いていた。
頭が良くて背も高い。
いつも晴太の隣には可愛い女の子が寄り添うほどよくモテる。
近所に住んでいて夏子の弟というだけで晴太は俺を弟のように可愛がってくれた。
ガキの頃の俺にとって晴太は自慢だった。
俺を特別扱いしてくれる晴太が大好きだった。
俺だって晴太の事は心配してる。
でも、それ以上に里子の事が心配だ。
昨夜も一睡もしてないはず・・・
早くつけ麺食べて家に帰さないと・・・
涼はホテルの前で行き交う人々をずっと見ていた。
里子はあっちに行ったりこっちに行ったり落ち着きもなくウロウロしている。
あまり挙動不審な動きをとるとホテルの人に変に思われてしまう。
「里子ちゃん、もう行こう。
今日は晴太はいない。
腹減った~~~
つけ麺食べたい~~~」