窓ぎわの晴太くん
晴太は美津子の豪邸で美津子の身の上話を聞いていた。
美津子の人柄だろうか・・・
戦争の頃の話でも悲壮感はない。
きっと美津子は生まれ持ってのポジティブ人間なのだろう。
美津子の話は若い晴太でも飽きずに聞くことができた。
「私の話は永遠に終わらないわ。
だから、私の話はここまでにして、はい、次は二枚目さんの番です」
「え? 僕ですか?
何も話す事なんてないですよ」
「あなたの名前も年齢も生まれた場所もそんな事は知らなくていい。
誰かっていう事を特定されたくないみたいだから」
「・・・はい」
晴太は学校の先生に説教されている気分になった。
小学生の時に悪さをして先生にばれた時の気分に似ている。
「じゃ、何を話せばいいですか?」
「あなたは詐欺に遭いそうな年寄りを守ってくれている。
でも、それは一部の人だけ。
大半の人はあなた達がどんな親切な事をしようとしていてもあなた達には近づかない。
田舎の年寄りには詐欺をする人も詐欺を防ぐ人も皆一緒に見えるから。
そうでしょう?」
晴太は黙っていた。
晴太のしている事は中々一般の人には分かってはもらえない。
怖がらせて怯えさせてしまうことの方が多かった。