窓ぎわの晴太くん
「分かってます。
でも、いいんです。
自分が好きでやっている事ですので」
さおりがコーヒーを二人の前に置いた。
晴太の分はアイスコーヒーにしてくれている。
「二枚目さん、あなたの顔を見ているととても切なくなる。
でも、昔はあなたみたいな顔をした人が大勢いたわ。
皆、苦しみや後悔を背負って生きていた」
晴太は目を細めて美津子を見た。
一体、俺の何を知っているんだ?
俺の顔に何が書いているのだろう・・・
「あなたが背負っている苦しみを私は知りたいって思ったの。
こんなに若くてハンサムで頭も良さそうな人が何に悶え苦しんでいるのかってね。
世間話だと思ってこのおばあちゃんに教えてちょうだいな。
最近は心を揺さぶられる話に飢えててね・・・
二枚目さんの裏事情を聞かせてもらえないかしら」
晴太は美津子の顔を見ていると、ただ誰かと話したくてうずうずしているようにも見えた。
晴太は里子にあの押さえ付けていた真実を話したせいで半分自暴自棄になっていた。
でも、多分、里子に話せた事で晴太の心の鍵が一つ外れたのは確かだ。
この頑なな心が柔らかくなる日がくるのだろうか・・・
「僕の話はお年寄りにはきつい話ですよ・・・」