窓ぎわの晴太くん
晴太はかなりの時間を美津子達と過ごしていた。
もうさすがに帰る時間だ。
「あの、もう、そろそろ帰ります・・・」
晴太がそう言うと、美津子はちょっと寂しそうな顔で頷いた。
「二枚目さん、あなたは気づいてないかもしれないけどあなたの心の傷はもう半分は治っているはずよ。
どうしてそう思ったかというと・・・
あなたは私達にたくさんの話をしてくれた。
苦しかったこと、悲しかったこと、おばあさまを亡くした経緯まで洗いざらい全部・・・
何かをきっかけにあなたの心の蓋が少しだけ開いたのね。
開いた蓋の隙間からたくさんの思いがあふれ出てきているのが私には分かる。
あなたも分かっているでしょう?
もがき苦しんでいる頃は誰にも何も話さなかったはずよ。
二枚目さん、あなたはもう大丈夫。
また、以前の普通の生活に戻りなさい・・・」
晴太は美津子の言いたい事はよく理解できた。
でも、それは俺の問題で死んでしまったばあちゃんの思いは?
俺が癒されてもばあちゃんの魂は癒されない。
「でも・・・
でも、きっと祖母が僕の事を許してくれません・・・」
美津子はさおりと顔を見合わせて小さくため息をついた。