窓ぎわの晴太くん



晴太はずっと下を向いていた。


「あなたからのおばあさまへの伝言は?
素直になれない孫の言葉を私が伝えてあげましょう」



「え? 言葉?」



「そう、おばあさまに何を一番伝えたいの?」


晴太は忘れていたはずの涙が次から次へ溢れてきた。


「祖母に伝えてもらいたい言葉は・・・」


涙と一緒に様々な想いや苦しみがポトポトと落ちる。


「ばあちゃんに・・・

ばあちゃんに会いたい・・・

ばあちゃんに会いたいって伝えて下さい・・・」


美津子は柔らかい笑みを浮かべて頷いた。


「もう、それだけでおばあさまはきっと喜んでる。

ちゃんと伝えておきますね。
できるだけ早くと言いたいところだけど、そればっかりは神様しか分からないことなので」


美津子はさおりとまた顔を見合わせて笑った。




晴太はしばらく涙が止まらなかった。

子供の頃、親父やおふくろの前では絶対泣かなかった俺もばあちゃんの顔を見ると次から次へと涙があふれ出た。
きっと今の俺はガキの頃に戻ってしまっている。
ばあちゃんがいつも俺を守ってくれていた頃の小さな晴太に・・・


ばあちゃん、ごめん・・・
俺はもう前を向いて進んでいいのかな・・・

またあの頃の晴太に戻ることができるのだろうか・・・






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