窓ぎわの晴太くん
里子は真ん中に置かれた机に座った。
「心を真っ白にしてポンと浮かんだことを話して下さいね」
涼は心配そうに里子を見ている。
「あなたの名前は?」 「野々山里子です」
「兄弟は?」 「妹が一人です」
里子はこんな簡単な質問ばかりでちょっと拍子抜けしていた。
「あなたが最近感動したことは?」
「大好きな人が私の作ったお弁当を美味しそうに食べてくれたこと」
そこにいる男子学生はその辺りから里子の答えに釘づけになっていた。
「あなたがいますぐにでもやりたいと思っていることは?」
「品川に行きたい」
「それはなぜ?」
「そこしか知らないんです・・・」
「今、あなたの心にパッと浮かんだ単語は?」
「ご飯」
「ご飯から連想するもう一つの単語は?」
「晴太」
涼はため息をついた。
心を真っ白にした里子には晴太しか浮かんでこない。
「あなたが生まれ変わるならどんな動物になりたい?」
「鳥」
「それは何故?」
「大空を飛んで大切な人を捜したい」
百程の質問に里子は疲れていた。
「じゃ、最後にもし無人島に行くなら何を持っていきたい?」
「無人島?
行きません。今、そんな所に行っている場合じゃないので」