窓ぎわの晴太くん
里子は研究室を出て大学の構内を涼と歩きながら少し自己嫌悪に陥っていた。
「涼さん、私のあんな答で皆さんの役に立てたのかな?」
涼は笑顔で里子の前に立ち親指を上に立てた。
「全然、大丈夫。
何の答えでもいいんだから。
里子ちゃんの答えや表情や目の動きや皆釘づけだったみたい」
「そうなんですか・・・
だったらいいんだけど・・・」
涼は里子の心の中にいる晴太の存在の大きさを改めて思い知らされていた。
でも、今は里子の気の済むまで晴太の事につき合ってあげようと心に決めていた。
一緒に心の傷を癒してあげたい。
「里子ちゃんさ、もしかしてあの日以降、毎日品川に行ってないよね?」
「・・・・」
あ、これは間違いなく行ってる。
「あの、実は・・・
今日、涼さんにつき合ってもらいたい事があって・・・
でも、嫌だったらはっきり嫌って言って下さい。
無理強いはしたくないので・・・
でも、やっぱり嫌ですよね、こんな事・・・
分かりました、ごめんなさい・・・」
涼は言葉を挟む間もなく終わってしまった里子の言葉に苦笑いをした。
「ってか、何かだけでも教えてよ。
せめて考える時間を下さい」