窓ぎわの晴太くん
「実は・・・
涼さん、誰にも言わないで下さいね」
涼は里子の仰仰しい言葉に少しドキドキしていた。
何を言い出すんだ?
「実は、私・・・
会社のマル秘事項の派遣さんの人事情報から晴太さんの住所を書き写してきちゃったんです」
「それってそんなに悪いことなの?」
里子ははてな顔をしながら頷いた。
「たぶん・・・
もし私が係長に聞いたら教えてくれたのかもしれませんが、でも今は個人情報の取り扱いにはすごく厳しいので」
「でも、今、手元に晴太の住所を里子ちゃんは持ってる」
「・・・はい」
涼は修羅場にならないことだけを願った。
別れを決めた晴太のことだ。
里子にきつく当たる可能性だって大いにある。
例えば女とかいたりしたら最悪だ。
でも、行くしかない。
里子を一人でそんな場所にやれるがはずない。
「じゃ、行くしかないっしょ」
里子はホッとした表情で涼を見た。
「涼さん、ありがとう・・・
じゃ、今日、お礼につけ麺食べに行きましょう。
私、おごりますから」
涼は里子とつけ麺という組み合わせを最高に愛していた。
晴太、頼むから留守にしててくれ・・・
最悪な気分でつけ麺は食べたくないから。