窓ぎわの晴太くん



里子は突然立ち上がり海の方へ歩き出した。

別に涼から逃げているわけではない。

私の心の中は悲鳴を上げていた。
きっと涼も私から離れていく・・・
だって晴太さんをいまだに忘れられずにいるんだもの。

きっと、今日を最後に涼さんもいなくなって私は一人ぼっちになる。


里子は柵越しにずっと海の流れを見ていた。
もちろん涼の気持ちは気づいていた。
でも気づかないふりをしてた。
今となればそんな自分が本当に嫌い。
自分の事しか考えていない、最悪な自分・・・


「里子ちゃん、どうしたの?」


里子は俯いたままだ。
でも、里子は顔をあげて涼の顔をちゃんと見た。


「涼さん・・・
ごめんなさい・・・

私、涼さんの気持ちはずっと分かってました・・・

でも・・・」


里子は涙がこみ上げてその先が言えない。
でも、その先をちゃんと涼に伝えないとならないのに・・・


涼は里子を後ろから抱きしめた。
里子の華奢な体は涼の腕の中にすっぽりとはまる。


「里子ちゃん、もういいよ・・・
答えは聞かなくても分かってるんだ。

ただ、俺の想いを里子ちゃんに伝えたかっただけで」











< 187 / 208 >

この作品をシェア

pagetop