窓ぎわの晴太くん
涼は夏子のアシスタントという仕事を放棄してもう先に神社に来ていた。
思ってたより大きくて奥行が深いこの神社は森の中にある隠れ家のような佇まいだ。
そして、正面玄関にあたる鳥居から一直線に神社の本殿まで参道が続いている。
もうすでにギャラリーが場所を取っていた。
涼はゾッとした。
里子はいいかもしれないがやっぱり都会育ちの晴太にはきつい。
涼は鳥居の横にあるベンチに座って里子達一同が来るのを待っていた。
すると、タクシーが鳥居の前に横づけした。
降りてきた女の子を見た時に、涼は一瞬里子かと思った。
たぶん、妹だ・・・
パッと見は里子に似てるがよく見ると全然似てない。
とういうか、里子よりはるかに綺麗だ。
グレーのパンツスーツに長い髪は一つにきつく結んでいる。
確かに晴太が言うように、里子とは真逆だった。
涼はあまりじろじろ見ないようにしていたがその人は涼に向かって歩いてくる。
「こんにちは。
あなたが涼さん?
夏子さんの弟の涼さんでしょ?」
涼は目を合わせられなかった。
「はい」
「私は里子の妹の野々山海です。
初めまして。
涼さんの話は姉の里子からよく聞いてます」
涼は顔が真っ赤だった。
海に見つめられているのが恥ずかしいのか、里子に自分が告白してフラれたことが恥ずかしいのか分からないくらいに。