窓ぎわの晴太くん
「ののちゃん、本当にごめん・・・
あ、ねえ、
ののちゃん、顔を上げて。
僕にその可愛くなった顔を見せてよ」
里子の涙は止むことはなかった。
里子には珍しく素直になれない。
花屋の看板の明かりの前で、晴太は里子の顔を覗きこんだ。
「ののちゃん、涙を拭いて、僕にその顔を見せて下さい」
里子はやっと顔を上げた。
そして、バックからハンカチを取り出すと涙を拭き始めた。
「ののちゃん、ちょっと待った」
晴太はそう言うと、里子の手からハンカチを取り上げ里子の顔に自分の顔を近づけて優しく里子の目の周りを拭き始めた。
「ののちゃん、エクステってすぐ取れちゃうんだよ。
だからこうやって優しく拭いてあげなきゃ。
せっかくこんなに可愛いいのに・・」
晴太は里子の髪にも気がつき、雨でおでこに張り付いた前髪も優しく拭いてくれた。
里子の大好きな晴太の指先がそれでもあふれ出る里子の涙をぬぐってくれる。
「晴太さん・・・
私、晴太さんの事を好きになってもいいですか?
皆はいい顔をしてくれないけど、でも、晴太さんが大好きなんです・・・
ごめんなさい・・・」
里子の生まれて初めての告白は、晴太の悲しげな表情できっと実らない恋の始まりを告げていた。