窓ぎわの晴太くん

   晴太の渇き




晴太は可哀想だと思ったが里子の告白を軽く受け流した。
それは受け流す以外の選択肢がなかったから。

じゃ、お前は何で里子と一緒にいるんだ?
そうやって優しい言葉をかけて思わせぶりな態度をとるのは何故なんだ?

晴太の中の冷静でまっとうな部分が問いかける。
それは、晴太自身が里子のような単純で素朴な愛に飢えていた。

今自分がやっている事が、里子といれば不思議と洗い流してもらえるような気がした。
いや、純真無垢の里子に洗い流してもらいたい。

晴太は闇にうずまく荒波の中、自分の人間性だけは失わないように必死に足を踏ん張って持ちこたえている状態だったから・・・

俺はきっと里子をいいように利用しているのだろう。
でも、この里子への気持ちは愛に変わることは絶対にない。
愛に変えることは許されない。

だって、俺は腐りきった汚れた人間だから、里子を愛する資格なんてない。
なのに、引き寄せられてしまう。

里子の笑顔を求めて近づいてしまうんだ・・・



「ののちゃん、お腹空いただろ?

もうこんな時間になっちゃたけど、ちょっと何か食べて帰ろうか?」




こうやって俺は自分から底なし沼にはまっていくのだろう・・・













< 27 / 208 >

この作品をシェア

pagetop