窓ぎわの晴太くん
晴太は駅まで里子を送っていく道中で、もう一度お弁当の事を聞いてみた。
「お弁当の件だけど、無理しなくていいからね。
ののちゃんが僕にお弁当を作ってきたら、広瀬係長や西川さん達が変な風に思うはずだし。
僕は今まで通りにコンビニで買ってくるから大丈夫だよ」
里子は立ち止まった。
晴太の目にまた里子の寂し気な顔が映る。
そして晴太の胸がざわつき出す。
「じゃ、こうします。
私、広瀬係長にも西川さんにもお弁当作ってきます。
そしたら、晴太さんに作っても何も問題ないと思うんです」
「いやいや、ののちゃん、それはたいへんだよ・・・
のんちゃんのその気持ちだけで僕はすごく嬉しいんだから」
「いや、大丈夫です。
だって、あんなに美味しそうに食べる晴太さんに味気ないコンビニのお弁当じゃなくて、手作りのお弁当を作ってあげたいんです。
だから、全然平気です」
晴太はもう何も言えなかった。
里子のこの気持ちを素直に受け入れてあげたいと不思議と思ってしまう自分が腹立たしかったけれど。
里子の悲しむ顔は晴太の弱みになってしまっていた。