窓ぎわの晴太くん



長方形のこの部屋に窓は奥の方に一つしかない。
その窓に面した一番奥のデスクが晴太の定位置だった。

奥まっているせいで派遣のおばちゃん達との絡みは少ない。
そして、窓から見える殺風景なビル街の景色も晴太は気に入っていた。

晴太のデスクから一番離れた入口の近くにある里子のデスクの周りで、キャーキャー皆が騒いでいるのが見えた。
きっと、里子の作ってきたお弁当のお披露目会をしているのだろう。


晴太はため息をついた。
この数日で里子との距離がグッと近くなった。
それは自分が招いたことであり、自分自身をそして里子までもを苦しみの淵に追いやろうとしている。

里子をこれ以上自分に近づけてはならない。
その事は頭の中では痛い程理解している。
なのに、俺の体は単純で素直な里子の笑顔を求めてしまう。

きっと、俺の方が里子に嵌まっている。
この会社に後2か月しかいれない事を百も承知のくせに・・・



すると、晴太は自分の席に向かって歩いてくる里子に気づいた。




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