窓ぎわの晴太くん



晴太は里子の作ってくれたお弁当をきれいにたいらげた後、里子のために自動販売機にコーヒーを買いに来ていた。
すると、晴太の携帯が鳴った。
晴太は周りの様子をうかがい誰もいないことを確かめてから電話に出た。


「もしもし」


晴太は声のトーンを一つ下げて電話に出た。


「派遣の仕事は今日までだろ?」


晴太の上司の相沢真一は不機嫌そうにそう聞いてきた。


「はい、週末まで休みです」



「じゃ、明日一番で千葉の房総の方の金井さんていうばあさんの所まで行ってほしい」



「はい、分かりました」



「詳しい事はまたメールで送るから。

それと、晴太・・・
そろそろその仕事も変える頃だろ?
あまり長いこと同じ場所にいるのはよくないぞ」



「はい、分かってます」


晴太は小さい声で答えた。


「あと、ばあさんの所へ向かう時は周りに気をつけろよ。
できるだけ目立たないように心掛けるんだ」



「・・・はい」


相沢の電話を済ませ、晴太は里子の待つ休憩室に向かった。


里子に心を持っていかれる前に俺はこの場所を去らなければならない。
今の俺は人を愛する資格はないし、愛する人ができてしまったらその人を危険な目に合わせてしまうろくでもない奴なんだ・・・

そして、復讐が終わるまでは俺はこの生活を変えることはない。


でも、胸が苦しい・・・
俺はもう里子を愛してしまったのか?











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