窓ぎわの晴太くん



晴太は更衣室のドアの前に立っていた。
さっきの里子の様子から何かしら自分に用事があるのではないかと思ったから。

晴太は春物の紺色のロングコートをはおり、オペレーター室の入口をじっと見ていた。


ほら、来た・・・



里子はお腹を押さえながら男子更衣室に向かって一直線に走った。
先に目を向けると晴太が立っているのが見える。

良かった・・・
まだ帰ってなかった・・・


「すみません・・・
晴太さん、あの・・・」


里子がそう言いかけたと同時に、晴太は里子の腕をひっぱり男子更衣室の中へ押しやった。


「あ、ごめん・・・
誰もいないからさ。
ゆっくり話せるかなと思って・・・」


晴太は息を切らし鼻の頭に汗をかいている里子を何事かと思って見ていた。


「そ、それが時間がなくて・・・
3分しかないののでゆっくり話はできないんです」


晴太は切羽詰まった里子の表情がやけに可愛く見えた。


「僕に用事だった?」



「あ、はい、え??」



「え??」



晴太の方が聞き返してしまった。

里子は何しにここに来たんだ?



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