窓ぎわの晴太くん



里子は一瞬で我に返ってしまった。
何も考えずにひたすらここへ来たのはいいけれど、晴太の連絡先を聞くという肝心な用事を思い出してしまった。

ど、どうしよう・・・

必死にかき集めていた勇気はこの一連の騒動でどこかに忘れてきたようだ。


「あの・・・その・・・」



「ののちゃん、時間は大丈夫?
もう3分過ぎちゃうよ・・・」


里子は泣きそうになった。
人を好きになるって里子にとっては冒険だらけだ。
連絡先を聞くだけなのに、まるで崖っぷちから遥か下に飛び込むような気分だった。


「晴太さんの・・・
晴太さんの・・・あの・・」



「僕の?何?」



「晴太さんの連絡先を教えてもらえないでしょうか?」


やっと言えた・・・

里子は安堵のあまり足がガクガク震えている。



「あ、連絡先は・・・」



晴太のその一言で里子はすぐに分かった。


晴太さんは私に連絡先を教えたくないんだ・・・





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