窓ぎわの晴太くん
オペレーター室は、派遣さんがほとんど帰ったせいで静まり返っていた。
里子は窓際に座ってパソコンに向かっている晴太をずっと見ていた。
広瀬係長はクレーム処理をほとんど晴太に任せている。
今日も晴太が5時上がりということを知っていながら、夕方の4時頃にたくさんの書類を悪びれずに平然と晴太に託していた。
里子はそんな時の広瀬は好きになれない。
時間が決められているここの派遣さんにとっては残業なんてあり得ないのだから。
まだ終わりそうのない晴太の事が気になり過ぎて、里子は晴太から目が離せないでいた。
いてもたってもいられなくなった里子は、気がつけば一口で食べられるチョコレートを持って晴太の隣に座っていた。
「東さん、疲れたでしょ? これ、食べないですか?」
晴太は横目で里子を見ると、パソコンを打っている手を止めた。
「ありがとう」
晴太が里子を見つめてそう言うと、里子は真っ赤になった。
本当に可愛いんですけど・・・
こんな素朴で純粋な子がまだこの東京の街にもいるんだな・・・
晴太は真っ黒のストレートの髪を後ろで結んで色白で化粧っ気なしゼロの里子のことをしげしげと見ていた。