窓ぎわの晴太くん
里子が慌ててオペレーター室へ帰ってくると、そこに西川達の姿はなかった。
里子の代わりに広瀬が仕事を済ませてくれたようだ。
「係長、すみませんでした」
「全然、平気ですよ。
それよりお腹は大丈夫?」
里子は自分のついた嘘がどれだけ陳腐なものだったのかと、改めて言われて恥ずかしくなった。
「はい、大丈夫です。
ご迷惑をおかけしました」
里子は広瀬に深々と頭を下げた。
そして、まだ残っている仕事を済ませるために席についた。
すると、里子のマグカップの下に小さく折り畳んだ手紙が挟まれている事に気づいた。
“ののちゃん、お疲れさまでした
それと美味しいお弁当ありがとうね
ののちゃんが晴太君を好きな事はもう分かっています
またその件はゆっくり話しましょうね
ののちゃん、自分を見失わないように!!
口うるさいおばちゃん西川より”
里子は自己嫌悪に陥っていた。
晴太の事になると見境がつかなくなる。
でも、それでも晴太さんに会いたい・・・
さっき別れたばかりなのに、もうこんなに晴太さんが恋しい。
里子はすでに何度も携帯を見ていた。
晴太からのメールが届いているかもしれないから・・・