窓ぎわの晴太くん
里子が夏子の店に着いた時はもう辺りは夕日に染まっていた。
駅前の裏通りは日曜日ということもあり閑散としている。
里子は夏子の店の前に看板が出ていることを確かめると何も考えずに店の中へ入った。
「すみませ~ん。
夏子さん、いますか~?」
店の中には柔らかいクラシックのBGMが流れている。
え? お店は開いてるのに誰もいないの?
里子がカウンターの奥の個室に誰かいないのか身を乗り出して見ていると、急にもう一つのドアから夏子ではない誰かがぬっと出てきた。
「誰ですか? 予約の人?
でも、この時間は誰も予約は入れてないって言ってたよな」
里子は驚いてその人をジッと見ていた。
「すみません、名前を教えてもらえますか?」
その人は若い男の子だった。
高校生?
髪は金色に染め左耳にピアスをしている。
パーマがかかったマッシュヘアの髪形は女の子のような綺麗な顔にとてもよく似合っていた。
昼寝でもしていたのか、寝ぼけた顔で頭を掻いている。
「あの・・・
予約は入れてなくて・・・
今日は夏子さんに会いに来たんです」