窓ぎわの晴太くん
「夏子さん?
何、姉ちゃんの知り合いなの?」
里子はこれで合点がいった。
この男の子が誰かに似ているとずっと思っていた。
そうだ、夏子さんに似ている。
目元や口の形とかそっくりだもの。
里子は一気に親近感を覚え笑顔で大きく頷いて見せた。
「姉ちゃんは1時間位帰って来ないよ。
今、出張サービスでお客さんの家まで行ってるから」
里子は受付に置いてある木製のベンチに腰掛けた。
「待ってていいですか?」
その男の子はカウンターから里子の前まで出てきて、里子の隣に座った。
「じゃ、名前教えて。
姉ちゃんにメールしとくから」
「あ、俺は安西涼」
涼はそう言うと、里子にメモ紙とペンを渡した。
里子は渡された紙に自分の名前を書いた。
「野々山さとこ?」
「いえ、りこです」
すると涼は里子の顔を見て吹き出した。
「さとこでいいじゃん。
野に山に里にって、田舎っぽい名前でマジうける」
里子はこういう風にからかわれる事には慣れていた。
だから自分の名前は好きじゃない。
里子は涼の顔を見た後に、むかついた顔をしてそっぽを向いた。