窓ぎわの晴太くん
里子の魅力
里子は大人しく車の助手席に座っていた。
まるで父親から怒られるのを待っている子供の様に。
それでも晴太は黙っていた。
まずは自分の頭の中を整理したかったし、今のこの状況で里子にどういう言葉をかけるべきなのか全く見当がつかなかったから。
「は、晴太さん・・・」
「うん?」
晴太は信号待ちで止まったタイミングで里子の顔を覗いて見た。
「今日はごめんんさい・・・
夏子さんがどういう風に晴太さんに何を伝えたのか全然分からないんですが、でも、こうやって忙しいのに私を迎えにきていただいて・・・
本当はすごく感動してて・・・
嬉しくてしょうがないんです・・・」
晴太は不思議と心の中がほっこりするのが分かった。
里子の単純で素直な言葉はいつも俺の魂に沁みこんでくる。
「晴太さん、怒ってないですか?」
「何を?」
里子はやっと晴太の声が聞けてホッとした。
車の中で一言も発してくれなかったから・・・
「涼さんの事です・・・
あの場所に涼さんを連れてきてしまった事・・・」