窓ぎわの晴太くん



晴太は車を運転しながら自分の愚かさを呪っていた。

夏子からメールがきた時、晴太は高速道路のパーキングでシートを倒し仮眠をとろうとしているところだった。

ののちゃんが泣いている・・・

そのたった一行の文章で晴太はすぐに東京に戻ってきた。

それがどういうことなのか・・・
簡単なことだろ・・・
俺は里子に惚れている。

自分の中で一番恐れていた最悪な事態・・・
人を愛するということ。
人を愛してしまえば今の俺の仕事は成り立たない。

でも、この愚かな行動は俺を中毒にさせる。
俺から毒を抜き取ってしまう・・・



晴太が横に座っている里子に目をやると、里子は外の景色をずっと見ていた。


「私、東京に出て一人暮らしを始めてから、こんな風に東京の街をドライブするのって初めてなんです」


里子は流れては消える外のネオンを眩しそうに見ている。


「東京の夜ってこんなに綺麗なんですね・・・」


街中を走る首都高速道路の上から見える東京タワーを見ながら里子はそう言った。


「東京タワーからの夜景は見た事ないの?」



「お昼は何度も上ったことはあるんですけど、夜は一度もないんです」



「じゃ、今度行こうか。
閉館時間に間に合うように・・・」









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