窓ぎわの晴太くん
晴太は里子に教えてもらった住所のマンションの前に車を停めた。
そして、里子が住んでいるであろうこのマンションは、晴太が想像していたものとは少し様子が違った。
まずは女の子の一人暮らしなのにオートロックじゃない。
かろうじて鉄筋コンクリート造りではあるが、3階建ての小さなマンションは見た目はただのアパートだった。
エレベーターもなければ、個々の郵便受けに暗証番号のロックさえついていない。
晴太はこんな物騒なアパートに里子のような無防備な女の子が一人で住んでいると知ると、晴太の中で眠っていたはずの保護本能がむくっと目覚めてしまった。
「晴太さん、そんな怖い顔をしてどうしたんですか?」
建物をくまなく見ている晴太を里子は不思議に思っていた。
「え? ごめん・・・
そんな怖い顔してた?」
里子は車の中に置いてある自分のバッグを手に持ちながら「はい」と小さな声で答えた。
「あ、あの、晴太さん・・・
もしよかったら、晴太さんに時間があったら、ちょっとだけうちでお茶していきませんか?」
里子は緊張しながら晴太に恐る恐る聞いてみた。