窓ぎわの晴太くん



晴太は今度はマンションの周りをチェックしていた。
最寄りの駅からは徒歩で10分くらいだろう、大通りを過ぎれば暗い場所が続いている。


「え? いいの?

じゃ、ちょっとだけお邪魔しようかな」


晴太は車を里子のマンションの隣にあるパーキングに停めた。

とにかく里子がどんなところに住んでいるのか知りたい。
知ったらますます里子の事が心配になるのは百も分かっている。
でも、それでもどうしても知りたかった。


里子の部屋は共用の階段を上がった踊り場に面した2階にあった。
晴太からしてみれば、3階に上る人達が必ず通る場所に部屋があるということ自体理解できない。

でも、里子は全くそんな事は気にしていなかった。



「狭い部屋なのでびっくりしないで下さいね。

晴太さん、ここに座って下さい。
このチェアはいつか大切なお客様が来た時のために買ったものなんです。

どうぞ・・・」


里子はそう言って一人掛けのお洒落なソファに晴太を座らせた。
晴太はそのソファよりテーブルの椅子に座りたかったが、里子の嬉しそうな顔を見ていると何も言えなかった。


「初めてなんです・・・
このソファに私以外の人が座るのが・・・」






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