窓ぎわの晴太くん



「ののちゃん・・・」


晴太はどうしていいのか本当に分からなかった。

里子にキスをしたいに決まっている・・・
でも、それは破壊を意味する。



「ごめんなさい・・・
私ったら何を言ってるんだろう・・・

24年間キスをしたこともない人間が、本当にもう笑っちゃいますよね。
晴太さんに見合う女性になりたいって頑張ってるんですけど、まだまだお子ちゃまで困ってます。

あ、そうだ。
今度、涼さんにでもキスの仕方を教わってきます。

こんな何も知らない女の子に迫られて晴太さんも迷惑ですよね」


里子は一人で喋り続けた。
自分があまりにもみじめ過ぎて話す事を止められない。

里子は玄関のドアを開けてあげた。
晴太はきっと早く帰りたいはず。
こんな気まずい雰囲気にしたのは私なのに・・・


でも、晴太は動かなかった。
里子の部屋の玄関は大柄の晴太には狭過ぎる。
でも今はそんなこと関係ない。

気がつくと、晴太は里子を優しく抱きしめていた。


「ののちゃんのファーストキスを僕にくれる?」


晴太は里子の顎を指で持ち上げると可愛いくちびるにキスをした。
里子のくちびるは少し震えている。
そんな里子がたまらなく愛おしい。


「涼になんか絶対渡さない・・・」


晴太は自分を抑えながら、里子の初めてのキスが柔らかい記憶として留まるよう、いたわるように包みこむように優しいキスをした。






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