窓ぎわの晴太くん

   里子の味方




里子は頭からつま先までの骨が全部溶けてなくなったかと思った。
晴太からのキスは極上に甘く里子の想像以上のものだったから。

キスの後に晴太は里子を優しく抱きしめてこうささやいた。


「可愛いののちゃん、今日はゆっくり休んでね」


今、里子はリビングにある小さな出窓に腰かけて外を見ていた。
この出窓から晴太が車を停めたコインパーキングがよく見える。

里子はカーテンを開け晴太が来るのを待っていると、くわえ煙草の晴太が歩いてきた。
すぐに窓を開け「晴太さ~ん」と晴太へ手を振った。



「晴太さ~~ん」


晴太は遠くで里子の声がしたのが分かった。
辺りをキョロキョロ見回すと、パーキングに隣接する里子のマンションの2階の窓から里子がこちらに向かって手を振っているのが見えた。

晴太は吸っていた煙草を瞬時に足元の側溝の穴に捨てた。

満面の笑みを浮かべてこちらに手を振る里子に晴太も手を振り返す。

今の晴太にはまるで里子のおままごとにつき合っているような感覚だった。

でも、晴太は里子の前では普通の青年でいたかった。
3年前までの自分のように。
里子といればその頃の自分を思い出す。


あの出来事さえなかったら、俺は今も普通の青年だったのかな・・・








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