窓ぎわの晴太くん



晴太はいつものようにいつもの窓際の席についた。
晴太は大人だ。
昨夜、里子とキスをしたからといって晴太の日常が変わることはない。
晴太はブラインドを上げて、ビルに差し込む新しい朝の光を目を細めて見ていた。


「今日はいい天気ね~~」


晴太が振り返ると、西川がわざとらしく外の景色を見るふりをして近づいてきているのが分かった。
西川は一瞬の動きで、丸めた小さなメモ紙をさりげなく晴太のズボンのポケットに入れた。


「じゃ、お互いお仕事頑張りましょう」


西川は晴太の肩をポンとたたいて自分のデスクに帰って行った。
オペレーターの人達は9時から忙しくなる。
9時が少し過ぎた頃、晴太は西川からもらったメモ紙を開いて机の上に乗せた。


“急にごめんなさいね
今日、仕事帰りにちょっとだけ私につき合ってくれないかしら
駅前の純喫茶サフランという店で待ってます

おせっかいなおばちゃん 西川より”


晴太はふぅと軽くため息をついた。

里子の事が心配なのだろう。
皆に好かれているのはいいことだけどこんな時は本当に面倒くさい。

でも、来いと言われれば行くしかない。
きっと話が弾むことはないだろうけど。


っていうか、その前に純喫茶サフランってどこだ?

ネットで検索してあればいいけれど・・・



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