窓ぎわの晴太くん



次の日、里子は少し緊張しながら会社に出勤した。

別に晴太とデートの約束をしたわけではないけれど、昨夜は一睡もできなかった。
今日の洋服を考えるのに何時間もかかったし、晴太と二人っきりになると思うだけで胸が高鳴って一晩中ソファの上であり得ない妄想にふけっていた。


里子が更衣室で制服に着替えオペレーター室に入ると、派遣前半組西川チームのリーダー西川恵子がすでに里子のデスクの前に立ち、里子の出社を待っていた。


「西川さん、どうしたんですか?
こんなに早く出社して・・・」


里子は、里子の母親世代の西川が里子を娘のように思ってくれている事をいつも有り難く思っていた。



「ののちゃん・・・
昨日、柴田さんから電話があってね・・・

あの、その・・・

晴太くん?」


里子は昨日の夕方の事を思い返していた。
里子が晴太と話している時、柴田さんは、確かに隣の席で仕事をしていた。


「あ~、東さんの事ですか?

実は、その、今日、なんか、エクステ?に連れて行ってくれるって・・・」


里子は嬉しさを隠せずに、西川の前でも顔を真っ赤にして恥ずかしそうにそう答えた。
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