窓ぎわの晴太くん
晴太はコーヒーに手をつけるでもなく西川の顔をジッと見ていた。
「それが西川さんに何の関係があるんですか?」
西川は表情の変わらない晴太の顔を探るように見ていた。
「晴太君、一体、本物の東晴太はどっちなのかしら?
こうやって私と話す時のあなたは、極悪人でも震え上がるような恐ろしい顔をたまにすることがある。
でも、ののちゃんと話す時のあなたは本当に優しい顔をしている。
あなたの本物が知りたいの」
知りたいのと言われても・・・
晴太は西川に自分の真の姿を見せるはずもないし、正直、自分の本物と言われても自分でも分かっていない。
「どっちも俺の本物ですよ」
「じゃ、ののちゃんの事をちゃんと考えてくれているのよね。
あの子は晴太君も分かっていると思うけど、何も知らない真っ新な画用紙のような純粋な子なの。
人とまともにつき合ったこともないし、人を疑う事も知らない。
そんなののちゃんが、今、晴太君に夢中になっているわ。
ののちゃんが恋をすることは自由よ。
好きになる人だって彼女が決める事・・・
でも・・・」
晴太は、しらけたような冷めた目つきで西川を見た。
「でも、晴太君はダメなの・・・でしょ?」