窓ぎわの晴太くん



晴太はそう言うと、マスターが淹れてくれたコーヒーを一息に飲み干した。
そして、ポケットから千円札を出しテーブルの上に置いた。


「晴太君・・・

これはお節介なおばちゃんの独り言だと思って聞いて。

あなたは根っからの悪い人間じゃないわ。
本物のあなたはきっと優しい人間なはずよ。

なんでそんな事を言うと思う?

だって類は友を呼ぶって言うでしょ。

純粋な心を持ったののちゃんが初めて好きになった晴太君は、きっとそういう要素をたくさん持っているってことなのよ。

と、私は思うけどね・・・」


晴太はしばらく動かなかった。
いや、動けなかった。

俺がなんで変わってしまったか?
そんな簡単なもんじゃない・・・


「じゃ」


晴太は純喫茶サフランを後にした。
西川の方を振り返る事もなく大股で駅へ向かって歩く。


西川のことは嫌いではない。
お節介なおばちゃんに間違いはないが、なんだかとても懐かしい気持ちにさせられた。


そうあの人に似ている・・・
どんな時も俺を愛してくれて、どんな時も俺を信じてくれた大好きなあの人に・・・



< 82 / 208 >

この作品をシェア

pagetop