窓ぎわの晴太くん
晴太はそう言うと、マスターが淹れてくれたコーヒーを一息に飲み干した。
そして、ポケットから千円札を出しテーブルの上に置いた。
「晴太君・・・
これはお節介なおばちゃんの独り言だと思って聞いて。
あなたは根っからの悪い人間じゃないわ。
本物のあなたはきっと優しい人間なはずよ。
なんでそんな事を言うと思う?
だって類は友を呼ぶって言うでしょ。
純粋な心を持ったののちゃんが初めて好きになった晴太君は、きっとそういう要素をたくさん持っているってことなのよ。
と、私は思うけどね・・・」
晴太はしばらく動かなかった。
いや、動けなかった。
俺がなんで変わってしまったか?
そんな簡単なもんじゃない・・・
「じゃ」
晴太は純喫茶サフランを後にした。
西川の方を振り返る事もなく大股で駅へ向かって歩く。
西川のことは嫌いではない。
お節介なおばちゃんに間違いはないが、なんだかとても懐かしい気持ちにさせられた。
そうあの人に似ている・・・
どんな時も俺を愛してくれて、どんな時も俺を信じてくれた大好きなあの人に・・・