窓ぎわの晴太くん



西川恵子は、東晴太の事を正直なところ快く思っていなかった。
晴太がここに来てから3か月近くが経つが、未だにまともに顔を見合わせてしっかり話をした事がない。
晴太くらいに顔もスタイルも良ければおばさんなど相手にしないことくらい分かっているが、それでもいい大人として同じ職場の人間と接する術は心得ているはずだ。

表向きに見せる晴太の笑顔は実に爽やかだ。
でも、西川は何かが違うと感じていた。


そう思い始めたある日のこと、派遣前半組の仲間の鈴木美奈子から妙な話を聞いた。

昼休みが晴太と同じになった鈴木は、晴太が休憩室の隅でコソコソ誰かと電話で話している内容をたまたま聞いてしまったらしい。

“おばあさん、預金の100万円は大丈夫?”とか、“僕が次に電話をするまでそのお金はちゃんと取っておいて”とか、ある事柄を彷彿させるような会話を交わしていたという。

西川はその話を鈴木から聞いた時、晴太は闇の人間だと確信した。
今世間で問題になっている〇〇詐欺に関わっている人間だと。

そう思って晴太を見ると、不自然な様子がたくさんある。


西川達は、上手に晴太と距離を置いていた。
たまに西川達に見せる晴太の裏の顔・・・
背筋が凍るほどの冷めた表情は、危険な人物と断定できるほどの凄みに満ち溢れていたから。



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