窓ぎわの晴太くん



涼は単純に嬉しかった。
聞けば里子の手料理をふるまってくれるらしい。

涼にとって里子はつかみどころのない女の子だ。
一般的な同年代の女の子を考えていたら里子とはつき合えない。
涼は里子との関係を簡単なもので終わらせたくなかった。


「どうぞ、いらっしゃい」


里子の部屋は玄関がすぐにキッチンに面していた。
涼が中に入ると、小さな丸いダイニングテーブルの上にはもう料理が所狭しと載っている。


「え? 里子ちゃんも今一緒に帰ってきたのにこの料理は??」


里子は涼の方を向くこともなくガスコンロに火をつける。


「誰かいたの?」


里子はやっぱりこっちを向かない。
火にかけた鍋をジッと見ているだけだ。
涼は里子の後ろに立った。


「晴太だろ?」


涼はずっとそうじゃないかと思っていた。
里子を悲しませるのはあいつしかいない・・・


「いいから。
涼さん、そこに座って。

今、お味噌汁を温めてるからもう少し待っててね」


涼はとりあえずテーブルの椅子に腰かけた。
せっかく里子の涙が止まっているのに余計な事を言ってまた泣かせるわけにはいかない。


晴太が里子を泣かせる達人なら俺は里子の笑顔を作る達人になってやるさ・・・







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