窓ぎわの晴太くん
里子の真心
晴太は朝から気分が落ち着かなかった。
昨夜の事を里子と話せていない。
昨日は急に相沢に呼ばれた。
週末に見張っていた千葉の田舎に住んでいる金井のばあさんが東京に出てきていると聞いて慌てて飛び出した。
里子に連絡をしようにも里子の連絡先を書いたメモをその場に持っていなかった。
見苦しい言い訳にしか過ぎない・・・
結局、俺は、俺の生活はこういうことの繰り返し。
里子がそれに気づいて俺から離れてもしょうがない。
いや、離れる方が里子のためなんだ・・・
晴太はいつも通りギリギリの時間に職場に入り、里子のデスクを覗いて見た。
でも、そこに里子の姿はなかった。
晴太はもういい大人だ。
そんな事で動じたり慌てたりはしない。
いつもの派遣社員の仮面をかぶるだけだ。
窓際の晴太はいつでもどんな場合でも淡々と仕事をこなす。
それが今までの晴太でこれから先も変わらない。
9時のチャイムが鳴ると一斉にオペレーターの人達の仕事が始める。
里子はまだ来ない。
何か具合でも悪いんじゃないだろうな・・・