窓ぎわの晴太くん
里子は晴太の座る窓際を見てみる。
そこにはいつもの晴太がいた。
白いシャツとカーキ色のチノパンに身を包み、何もなかったよう表情でパソコンを見ている。
里子は晴太の横顔をずっと見ていた。
晴太のサラサラした少し長めの髪が好き・・・
涼し気な目元に笑うと浮かぶ縦えくぼ。
里子を見つめる時にだけ見せる少しだけ目を細め少しだけ笑みを浮かべる優しい顔。
里子は必死に頭の中から晴太の事を追い出した。
仕事をしなきゃ・・・
昨日の事なんて何も気にしていませんって思わせたい。
里子は午前中は仕事の虫になった。
西川をはじめ派遣のおばちゃん達が心配して交互で様子を見に来る始末だ。
私って普段そんなに仕事をしていない?
里子はそんな自分が情けなかった。
今日は晴太と里子は休憩時間が同じだ。
結局、里子はいまだに晴太にお弁当を渡せずにいた。
早く渡さなきゃ、晴太はコンビニに買い物に行ってしまう。
13時になり晴太が席を立ち廊下へ出た途端、里子もお弁当を二つ持って廊下に飛び出した。
里子が慌てて晴太を追いかけようとした廊下の先には、目を細め優しい笑みを浮かべた晴太が分かっているような顔をして里子を待っていた。
「ののちゃん、おはよう・・・」