天狗の娘
序章
「ほぅ、なかなか雅じゃのぅ」
彼はそう呟いて、苔色の瞳孔をすいと細めた。
視線の先には、一基の石造りの鳥居。
斜光の燃えるような樺色に向かって聳えている。
むせ返るような草いきれも、痛いほどの残照も、ここでは背景にすぎなかった。
山道を抜けた先の、切り立った崖の上に悠然と構えるその姿は、凛々しくも瀟洒で、見る者を圧倒し、魅了した。