天狗の娘


陽はすっかり沈んで、ヒグラシの忘れ音が木々の間にこだましている。

帰路に就いた母子の背後に、そろりと境門を潜る二つの影があった。


 鳥居の額束が、ぎらりと青い月光を跳ね返し、二つの影は夜の帳に消えた。

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