天狗の娘
常世へ
夕暮れ時の畦道は、蛙や虫の声ばかりで、煙霞の先、微かに見える黒い山々の影は、どこか妖しかった。
この地方で言い伝えとなっている、怪異などが出てきてしまいそうな、そんな雰囲気。
湿気を含んだセーラー服が、冷たく肌に張り付く。
人っ子一人いないぬかるんだ細道は、寂寞としていて、ひたひたという自分の足音と、自転車の車輪が回転する乾いた響きだけが、虚しく霧の中に散った。