天狗の娘
「慶一郎様……?」
そういえば、父の事をそのように呼んで、後をついて回っていた少年がいた気がする。
その少年が現れて直ぐ、慶一郎は紗希の家から去ったのだった。
確か、その少年の名は……。
「隼……?」
青年の顔を仰ぎ見ると、微かにかつての少年の面影が残っている気がした。
少年の姿を最後に見たのは、紗希がまだ幼い時で、記憶はかなり曖昧になってはいるが。
それでも思い出したのは、その少年の存在が、あまりに強く記憶に刻まれていたからであろう。