天狗の娘
ある、嵐の夜の事だ。
小さな一軒家は軋み、停電のせいでどこそこも真っ暗だった。
懐中電灯の僅かな光を頼りに、紗希と母親は食事を終えたところだった。
ノイズばかり流れるラジオの合間から時折聞こえる、何とか警報と叫ぶアナウンサーの緊迫した声が、更に紗希の不安を駆り立てた。
半泣きの彼女が母親に慰められていると、慶一郎が帰宅してきた。
「おとうさん!」
叫び、迎えに走った。
しかし紗希は、玄関先の慶一郎の姿を見て、首をかしげる。
「……それ、だあれ?」