手に入れる女
「大丈夫ですよ。妻は、僕の選んだものならいつでも喜んでくれるから」
佐藤の顔がにやついた。
ーー妻に愛されてますアピールで牽制ってわけね。ふん、甘い、甘い。
優香は冷ややかに言い放った。
「そう思ってるのは佐藤さんだけかもしれませんよ。一人よがりのプレゼントほどありがた迷惑なものはないんですから」
「相変わらずハッキリ言いますね」
優香は畳み掛けるように話を続けた。
「知ってます? 女は下品な下着と趣味の合わないバッグほどもらってげんなりするプレゼントはないんですよ」
そう言えば佐藤が一昨年選んだバッグは……確かに美智子が使ってるのを今年に入ってから見たことがない気がする。
しばらく無言になった佐藤を見て優香はふふと笑いをもらした。
佐藤が戦意喪失したとみて、優香はとどめの一撃をかける。
「これ以上のありがた迷惑をかけないためにも、素直にアドバイスを受け入れた方がいいと思いますよ」
佐藤は優香の口のうまさにに半ば感心するやら呆れるやらである。
「なかなか手強いですね」
「何を言っているんですか? 私は、佐藤さんがヘンなプレゼントをして奥様にガッカリされたら気の毒だと思っているだけですよ」
ーーうそつけ。
「よくそんなことが言えますねぇ」
そうは呟くものの、反撃の言葉がうまいこと出て来ない。佐藤が諦めたようにため息をついた。
優香は間髪いれずに、満面の笑みをたたえて提案した。
「じゃ、明日、買いに行きましょうか。 明日メールで詳細を決めましょう?」