手に入れる女
#7
「キター。 食事キター!! もちろんドタキャンするんだろうなあ?」
居酒屋に山下を強引に誘って事情を説明した時の第一声がこれだった。
山下の方が佐藤より余程興奮している。
「それで終わりそうなら相談しないよ。ドタキャンした日には次はどんな手を打ってくることか。
さらにハードルが高くなりそうな気がするんだよ」
佐藤は、冷酷に優香を断われない自分に少し呆れていた。
はっきりと断ち切らない自分が悪いのは百も承知だったが、我が強くて、強引な彼女の激しさについ身を委ねたくなってしまう。
何と言うか、佐藤の持ち合わせる事のない優香の一途な熱情はクラクラするほど魅惑的で、触ると火傷しそうなその熱気に酔っているのかもしれなかった。
それにしても優香は、少し牽制したぐらいでは全くたじろがなかった。
「何しろ、敵は開き直ってるからなー、全然動じねーんだよ。オレ、正直断りきる自信ねー……」
佐藤は感服したような口調になっていた。
「なんかやり込められるのを楽しみにしてるような感じだな」
山下にそう言われると、優香に迫られるのを楽しんでいる自分がいることを自覚しないわけにはいかなかった。
全く身勝手なことであったが、すっぱり切り捨ててしまえばそういうやり取りも終わってしまうのがとても残念であった。